知的障害か発達障害か、グレーゾーンだと障害年金はもらえないのでしょうか?

- 詳しいプロフィール
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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知人から、知的障害の人は障害年金がもらえるが、発達障害の人はもらえないと聞きました。
私は知能指数が70でグレーゾーンと言われています。
落ち着きがなく良く動き回り、電話対応ができず言われたことを忘れてしまいます。
アルバイトをしても長続きしません。今は無職です。
知的障害か発達障害か、グレーゾーンだと障害年金はもらえないのでしょうか?
障害年金は、知的障害だからもらえる、発達障害ではもらえない、というものではありません。
知的障害、発達障害の両方とも障害年金の認定の対象とされているので基準を満たせば受給できます。
知能指数で受給が決定するものではありませんので、知能指数がグレーゾーンであっても、障害年金がもらえる可能性は考えられます。
知能指数のみで判断されません。
発達障害について
たとえ知能指数が高くても、社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係を築いたり、意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定されます。
知的障害について
知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断されます。
両者とも知能指数のみで判断されるものではありません。
それでは、知的障害と発達障害での障害年金の請求における違いについて見ていきましょう。
知的障害と発達障害での障害年金の請求における違いについて
初診日の証明について
知的障害は、先天性またはおおむね18歳までに知的機能の障害があらわれるので、実際に初めて受診した日がいつであるかに関わらず、生まれた日を初診日とされます。
そのため、他の傷病では初診日の傷病が必要ですが、知的障害に限っては、初診日の証明は必要ありません。
発達障害については先天的なものであったとしても、発達障害で初めて医師等の診療を受けた日が初診日となります。
そのため、発達障害については、初診日の証明が必要となります。
保険料の納付要件について
通常、障害年金を受給するためには、保険料をある程度納付していることが必要となりますが、知的障害はこの限りではありません。
生年月日を初診日とするため、保険料納付要件を問われることはありません。
発達障害については以下の保険料納付要件が問われます。
- 保険料納付要件…原則として保険料を、ある程度納付または免除をしていること
初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。
または、初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。
なお、20歳前の公的年金未加入期間に初診日がある方は、保険料納付要件は問われません。
障害認定日について
障害認定日とは障害の程度の認定を行うべき日をいい、障害認定日が到来すれば障害年金を請求することができます。
知的障害の場合、20歳に到達したら障害年金を請求することができます。
幼少の頃から療育手帳の交付を受けていたとしても、20歳の到来を待たなければなりません。
一方、20歳を過ぎてから知的障害であることがわかった場合は、すぐに障害年金を請求することができます。
発達障害については、初診日から起算して1年6月を経過した日が障害認定日となります。
以下で障害年金について詳しくみていきましょう。
障害年金の種類
障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。
種類 対象となる人 障害基礎年金 「初診日」に国民年金に加入していた人 障害厚生年金 「初診日」が厚生年金保険加入中にある人 ※「初診日」とは、「病気やけがについて初めて医師の診療を受けた日」を指します
自営業者、フリーランス、専業主婦、無職の方は、障害基礎年金の対象となります。
知的障害は、生年月日が初診日となるため、自動的に20歳前傷病の障害基礎年金の請求となります。
一方、発達障害は原則通り、初診日に加入している年金制度によって障害基礎年金の請求となるか、障害厚生年金の請求となるかが決まります。
では、どのような状態なら障害年金を受給できるか確認しましょう。
どのような状態なら障害年金を受給できるか
障害年金では、ケガや病気の程度に応じて等級が設定されています。
▼障害基礎年金
1級と2級▼障害厚生年金
1級、2級、3級障害が重い順に、1級、2級、3級となります。
1級、2級、3級の状態は、以下の通りとなっています。
障害年金の等級 障害の状態 3級
※障害厚生年金のみ労働に著しい制限があるもの 2級 日常生活に著しい制限があるもの 1級 他人の介助がなければほとんど自分の用事を済ませることができないもの 知的障害の場合、障害基礎年金の請求となりますので、2級以上に該当しなければ受給することができません。
一方、発達障害の場合、初診日に厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金の請求となり、3級以上に該当すれば受給することができません。
本事案の場合
障害年金は病名で受給の可否が決まるものではありません。
また、上記の通り、知的障害の場合は2級以上に該当しなければ受給できませんが、発達障害の場合は障害厚生年金の請求の場合は3級以上に該当すれば受給できます。
そのため、知的障害ならもらえる、発達障害ではもらえないと決まっているものではありません。
飽くまでも障害の状態を審査され、受給の可否を決定されます。
障害年金を受給するために
障害年金の審査は、「しんどい」、「お金に困っている」、「悲しい」等ではなく、あくまで認定基準に該当しているか否かを審査されます。
そのため、国民年金法・厚生年金法や認定基準等をご存じない方がひとりで対応するには限界があります。
ご自分の生活がかかった大切なことなので、専門家である社労士に知識・経験を求めるのが最善の選択です。
一人でわけも分からず不安いっぱいで戦うのではなく、あなたの代理人となって受給に向けて取り組んでくれる専門家である社労士を味方につけてください。
お気軽にお問合せください。
障害年金は国の施しではありません。国民の権利です。
煩雑な手続きを代行し、権利を行使するお手伝いをしっかりさせていただきます。
どんなご相談でも承ります。お気軽にお問合せください。
お電話でも承ります
06-6429-6666
平日9:00~18:00
このQ&Aの回答者
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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