緑内障で障害者手帳の審査は該当しなかったので、障害年金の申請も通らないのでしょうか。

- 詳しいプロフィール
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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私の父(58歳)は、糖尿病の合併症で緑内障にかかり、視力が低下し視野も狭くなっています。
障害者手帳を申請したのですが、審査で該当せずダメでした。
この場合、障害年金の申請も通らないということでしょうか。
まず、障害年金と身体障害者手帳の関係について確認します。
障害年金と身体障害者手帳の関係
障害年金と身体障害者手帳は、根拠法、認定基準、審査期間の異なる全く別の制度ですので等級などは連動しません。
そのうえで、身体障害者手帳の等級から障害の程度を予測し、障害年金に該当するか検討していきましょう。
身体障害者手帳の視力障害、視野障害について
身体障害者手帳の、視力障害で一番軽い等級は6級、視野障害は5級です。
【障害者手帳の視力障害6級】
- 視力の良い方の眼の視力が0.3以上0.6以下かつ他方の眼の視力が0.02以下のもの
【障害者手帳の視野障害5級】
- 両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの
- 両眼中心視野角度が56度以下のもの
- 両眼開放視認点数が70点を超えかつ100点以下のもの
- 両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
次に、障害年金の視力障害の認定基準を検討してみます。
障害年金の視力障害の認定基準について
【1級】
- 視力の良い方の眼の視力が0.03以下のもの
- 視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
【2級】
- 視力の良い方の眼の視力が0.07以下のもの
- 視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
【3級】(症状が固定していないもの)
- 視力の良い方の眼の視力が0.1以下のもの
【障害手当金】(症状が固定しているもの)
- 視力の良い方の眼の視力が0.6以下のもの
- 一眼の視力が0.1以下のもの
視野障害は以下の通りです。
障害年金の視野障害の認定基準
◎自動視野計に基づく認定基準
- 1級…両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの
- 2級…両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
- 3級…両眼開放視認点数が70点以下のもの
- 障害手当金…両眼開放視認点数が100点以下のもの又は、両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
◎ゴールドマン型視野計に基づく認定基準
【1級】- 両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの
【2級】
- 両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの
- 求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、I/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるもの
【3級】(症状が固定していないもの)
- 両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下のもの
【障害手当金】(症状が固定しているもの)
- 両眼による視野が2分の1以上欠損したもの
- I/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの
本事案について
上記の身体障害者手帳の認定基準と障害年金の認定基準を比較すると、手帳の等級に該当しない場合は、障害年金の認定基準にも該当しないでしょう。
今後、状態が進行し、上記の認定基準に該当する程度となった場合は、改めて障害年金の請求についてご検討されてはいかがでしょうか。
なお、障害年金を受給するためには、以下の「初診日要件」および「保険料納付要件」についても確認しなければなりません。
また、障害年金の事後重症請求は65歳までに行わなければなりませんので、ご注意ください。
傷病により障害の状態にあるものが、障害認定日において障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなかった場合でも、その後、状態が悪化し、障害等級に該当する障害の状態となった場合、65歳に達する日の前日までに裁定請求をすることができます。
これを事後重症請求といいます。
事後重症請求で障害年金の認定を得ることができた場合、請求日の属する月の翌月分から受給することができます。
初診日要件とは
初診日は、国民年金と厚生年金のどちらに加入していたか、その加入していた制度によって、もらえる年金の種類が決まります。
- 初診日が厚生年金被保険者期間中にある場合は、障害厚生年金
- 初診日が国民年金被保険者期間中にある場合は、障害基礎年金
- 初診日が20歳前または60歳以上65歳未満(国内に住んでいる方のみ)の年金未加入期間にある場合は、障害基礎年金
初診日とは…
初診日とは、障害の原因となった傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日をいいます。
障害基礎年金と障害厚生年金の障害等級について
- 障害基礎年金…1級および2級
- 障害厚生年金…1級、2級および3級
症状の重さによって等級が分けられています。
3級が最も症状が軽く、2級、1級になるにつれて症状が重く、また受給額も多くなります。
保険料納付要件とは
初診日の前日において以下の1または2を満たしている必要があります。
- 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
- 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
※ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。
障害年金を受給するために
障害年金の申請は、国民年金法・厚生年金法や認定基準等をご存じない方がひとりで対応するには限界があります。
ご自分の生活がかかった大切なことなので、専門家である社労士に知識・経験を求めるのが最善の選択です。
「事務手数料の2万円を支払うのが惜しくて、とりあえず自分でやってみたけど不支給だった。なんとかしてください」というご相談をいただくケースがあります。
当然その時点からできる限りのサポートをさせていただくのですが、事後重症請求の方の場合、1か月請求が遅くなれば、障害基礎年金2級なら毎月約6万5千円ずつ捨てていくことになります。
最初にかかる2万円の事務手数料を惜しんだばかりに、障害年金の受け取りが数か月遅くなっては本末転倒です。
一人でわけも分からず不安いっぱいで戦うのではなく、あなたの代理人となって受給に向けて取り組んでくれる専門家である社労士を味方につけてください。
お気軽にお問合せください。
障害年金は国の施しではありません。国民の権利です。
煩雑な手続きを代行し、権利を行使するお手伝いをしっかりさせていただきます。
どんなご相談でも承ります。お気軽にお問合せください。
お電話でも承ります
06-6429-6666
平日9:00~18:00
このQ&Aの回答者
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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- 私は生まれつき視神経が弱い病気で、幼少期から通院しています。症状は視野が欠けるもので、緑内障に似ています。治療は点眼のみです。現在40歳で、15年ほど事務の仕事をしてきましたが、これ以上病気を進行させたくないため、退職を検討しています。現時点で障害年金をいただくことは難しいかもしれませんが、退職後であれば受給は可能でしょうか。
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- 私は現在50代女性です。パートで事務の仕事をしています。最近書類やパソコンが見えづらいと感じて、メガネ屋で老眼鏡を作りに行ったのですが、緑内障ではないかと言われました。眼科で検査をしたら、軽度の視野欠損があると言われました。今後視野欠損が進んで仕事に支障をきたすようになれば、障害年金がもらえるでしょうか。