社会的治癒に当てはまるので、障害年金の遡及請求を行ってもよいのでしょうか。

- 詳しいプロフィール
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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私は22歳の時に気分の浮き沈みが激しくなり、初めて精神科を受診しました。
その時は特に診断名はなく、抗うつ薬を処方されただけで、その後調子が良くなったので1回の受診で終わりました。
それから5年ほど経って、またイライラや気力低下があり、別の精神科を受診して気分変調症と診断され、発達の検査もして広汎性発達障害と診断されました。
現在も3年くらい通院を続けているのですが、就職ができないので主治医から障害年金の申請を勧められています。
私の場合、5年間受診していない期間があるので社会的治癒に当てはまるようなのですが、遡及請求を行ってもよいのでしょうか。
ご質問者様の場合、社会的治癒が認められた場合は、遡及請求が可能でしょう。
ただし、社会的治癒が認められない場合は、遡及請求は困難でしょう。
社会的治癒とは
社会的治癒とは、医療を行う必要がなくなり社会復帰して、無症状で医療を受けることなく相当期間(傷病にもよりますが、約5年程度)経過している場合に、前の傷病と後の傷病を分けて取り扱う考え方です。
以前に受診していたが、社会的に治癒しているため、後で受診した医療機関を初診日として主張することが社会的治癒の主張です。
この社会的治癒については、請求人が主張し、保険者が認めるか否かを判断するものとなっているため、主張した社会的治癒が必ずしも認められるとは限りません。
5年間受診していない期間があっても、社会的治癒が認められない場合もあります。
ご質問者様の場合、社会的治癒が認められた場合は、現在の病院を初めて受診した日が初診日となり、障害認定日の時点でも受診をしていたことが拝察されるため、遡及請求は可能でしょう。
ただし社会的治癒が認められず、以前に受診した日が初診日とされた場合は、障害認定日の時点では受診していないことが拝察されるため、遡及請求は困難でしょう。
遡及請求(さかのぼって請求すること)とは
遡及請求とは、障害認定日に障害等級に該当しているが、知らなかったなどの理由で、障害認定日から1年以上経過して請求するものです。
障害認定日とは
障害の程度の認定を行うべき日をいい、原則として、
- 初診日から起算して1年6月を経過した日
- 傷病が治った日(その症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含む)
のいずれか早い日となります。
初診日とは
障害の原因となった傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日をいいます。
なお、現在も継続して通院し、気分変調症と広汎性発達障害の診断をされているとのことですので、事後重症請求は可能であることが考えられます。
事後重症請求とは
障害認定日に、障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなかった場合でも、その後、状態が悪化し、障害等級に該当する障害の状態となった場合、65歳に達する日の前日までに裁定請求をすることができます。
以上について参考にしていただき、申請についてご検討されてはいかがでしょうか。
なお、気分変調症と広汎性発達障害の認定基準は、次の通りです。
気分変調症の認定基準
気分変調症の各等級に該当する障害の状態は以下の通りです。
- 1級…高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したりまたは頻繁に繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの
- 2級…気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したりまたは頻繁に繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの
- 3級…気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したりまたは繰り返し、労働に制限を受けるもの
発達障害の認定について
発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことが出来ないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定をされます。
発達障害の認定基準
【1級】
以下1〜2を満たすもの
- 社会性やコミュニケーション能力が欠如している
- 著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
【2級】
以下1〜2を満たすもの
- 社会性やコミュニケーション能力が乏しい
- 不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの
【3級】
以下1〜2を満たすもの
- 社会性やコミュニケーション能力が不十分
- 社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの
(本回答は2022年9月現在のものです。)
障害年金の申請について
ご自身で書類をしっかり準備したつもりが、症状に合った等級が認められないケースや、不支給となるケースが見受けられます。
このようなことを防ぐためには専門知識が必要となりますが、そうなると社労士に相談するか関連書籍を参照しなければなりません。
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◎社労士への依頼も合わせてご検討ください
審査を受ける機会は審査請求、再審査請求を含めて3回あります。
しかし、1度目の請求で認められない場合、2度目以降で決定が覆るのは、たった14.7%となっています。より確実に認定を得るために社労士に申請を代行依頼する方法があります。
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06-6429-6666
平日9:00~18:00
このQ&Aの回答者
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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