高次脳機能障害です。仕事をしていますが収入が激減しています。障害年金はもらえますか。

- 詳しいプロフィール
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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夫は現在55歳会社員です。
2年前に交通事故で頭を強く打ち、意識不明となりました。
幸い命は助かりましたが、高次脳機能障害と診断されました。
以前の記憶がなく、長い間やってきた仕事ができなくなりました。
会社の厚意で雇っていただいていますが、仕事は軽作業しかできず残業もできないため、収入が大幅に減少しています。
障害年金が受給できれば助かるのですが、会社に勤めている状態でも障害年金は受給できるでしょうか。
会社に勤めている状態でも障害年金の認定が得られる可能性は十分考えられます。
働いているからといって、不支給になるとは限りません。
障害年金の受給者のうち、34.06%の方々が働きながら受給しています。
受給者数
働いていない
働いている
働いている人の割合
2,096,000人
1,346,000人
714,000人
34.06%
そして、精神の障害に限定すると、28.28%の方々が働きながら受給しています。
精神障害による
受給者数働いていない
働いている
働いている人の割合
725,000人
508,000人
205,000人
28.28%
また、働いていることを理由に支給が認められなかった方が訴訟した結果、受給が認められた判例もあります。
このように、働いているからといって受給できないわけではないことがわかります。
高次脳機能障害で働きながら障害年金を受給できたYさんの事例
私が申請をお手伝いした事例を紹介します。
性別・年齢
男性、58歳
症状
記憶力、判断力が著しく低下している。
就労状況
一般企業に12年勤務(一般雇用)。月給約25万円。
結果
障害厚生年金2級
障害年金の認定基準
障害年金には1級から3級の等級があり、各等級の認定基準は以下の通りとされています。
1級
他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のもの
2級
必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のもの
3級
労働に著しい制限を受ける程度のもの
この基準を見ると、「働いていたら障害年金はもらえない」、「働いていたら2級はとてもじゃないけど無理」と思ってしまいそうです。
しかし、これは目安であり、「働いていたらもらえない」「働いていなければもらえる」という主旨ではありません。
精神障害で働いている場合に審査で考慮されること
精神に障害があっても、「働いているということは、十分に日常生活能力や労働能力がある」と考えるのではなく、
- 療養状況
- 仕事の種類
- 仕事の内容
- 就労状況
- 仕事場で受けている援助の内容
- 他の従業員との意思疎通の状況
等を十分確認したうえで判断されます。
その他、就労している場合に特に審査で考慮されること
- 発病後も継続雇用されている場合は、従前の就労状況を参照しつつ、現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無などの状況
- 仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況
- 月収だけではなく、就労の実態
等を考慮し、検討されます。
Yさんの具体的な状況
Yさんの具体的状況は以下のとおりです。
- もともと12年ほど勤務しており、職場の理解のもと勤務を継続。
- 以前の仕事はできないため、簡単な仕事にしてもらっているが、ミスが多いため逐一確認してもらっている。
- 聞かれたことに適切に答えられず、同僚と会話が困難。以前のように雑談ができず、意欲、気力の低下が著しい。
- 食事の準備や買い物の判断、金銭管理など日常生活のあらゆる場面で家族のサポートが必要であった。
「労働能力がある」とは、障がいのない人と同様の労働環境で、同様の仕事をしている、できている状態をいいます。
Yさんは、表面的には一般企業に勤めているため、十分に日常生活能力があり、労働能力もあるように見えますが、実際にはそうではないことがわかります。
この事実を正確かつ、審査機関が2級の認定のために考慮する事項を余すことなく盛り込んだ書類を作成することで2級をもらえる可能性があると判断しました。
結果、無事2級の支給が決定されました。
あなたの症状は受給できる可能性は十分にあります
ご主人の症状は、「長い間やってきた仕事ができなくなった」「軽作業しかできず残業もできない」ということですので、障害年金をもらえる可能性は十分にあります。
もう少し詳しい状況をお聞かせいただければ、障害年金をもらえるかどうかチェックいたします。
なお、うつ病や統合失調症など、その他の精神の障害でも他人の力を借りないと日常生活や仕事ができない状況であれば、たとえ働いていたとしても、もらえる可能性は十分にあります。
申請に必要な書類準備の難しさ
障害年金の審査に、面接はありません。
すべて書類で審査されます。
そのため、書類だけで「就労にどのような制限を受けているのか」「働いているならどんな風に働いているのか」を審査機関に分かるように作成しなければなりません。
必要なのは、客観的事実を揃え、正確に事実をわかりやすくすることです。
特に、精神の病気の場合は、目に見える症状ではないので、主観的な内容を記載するのでは不十分です。
Yさんは、「ずっと働いていたし給料ももらえてたから障害年金は無理だと思ってた!まさか本当にもらえるとは!」と大変喜んでおられました。
障害年金は「施し」ではなく「権利」です
障害年金は、施しではありません。社会保険料を納めている人にとっての権利です。
本当はもらえる権利があるのに、書類が不十分だからといって不支給になるのは残念なことだと思っています。
私は、もらうべき人のために、的確にお客様の状況を把握し「障害年金をもらえる書類を準備する」ことを常に意識しています。
この権利をきっちり行使できるようお手伝いいたします。
面談では社会保険労務士の中井が直接対応致しますので1日2人までのご予約とさせていただいております。
遠方の方の場合、ZOOMやLINEのビデオ通話での対応となりますが、月に5人程度と限らせていただいております。
お住いの都道府県によっては都道府県担当の社会保険労務士を案内させていただくケースがあります。
まずは、お気軽にご相談ください。
お気軽にお問合せください。
障害年金は国の施しではありません。国民の権利です。
煩雑な手続きを代行し、権利を行使するお手伝いをしっかりさせていただきます。
どんなご相談でも承ります。お気軽にお問合せください。
お電話でも承ります
06-6429-6666
平日9:00~18:00
このQ&Aの回答者
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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