知的障害とてんかんの障害年金申請で、5年遡及と国民年金の返還があるのですか?

- 詳しいプロフィール
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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私の弟は今年で50歳になります。知的障害とてんかんがあります。
てんかんの治療は20歳頃まで続けていましたが、
発作の頻度が減ってきたため、それ以降は受診はしていませんでした。
最近になって療育手帳のことを知り、近くの精神科に通うようになりました。
障害年金も申請しようと役所に行くと、うまくいけば5年遡及の判定が下りて、
これまで納めた国民年金が返ってくるかも知れないと言われました。
これが本当であれば数百万単位でもらえることになると思うのですが、本当ですか?
本回答は2020年2月現在のものです。
弟様の場合、20歳の時点の診断書を取得し、
その時の障害の程度が2級に該当する程度であれば、
直近5年分の年金が支給されることになり、
納めていた国民年金も返還される可能性が考えられます。
しかし現在は50歳とのことですので、30年前のカルテがないなどの場合は、
遡及請求そのものをすることができません。
また、遡及請求をすることができても、障害の状態が2級に該当しない場合は、
認定を得ることはできません。
遡及請求とは
遡及請求とは、障害認定日に障害等級に該当しているが、
知らなかったなどの理由で、障害認定日から1年以上経過して請求するものです。
障害認定日から3か月以内の診断書を取得することができれば、
遡及請求を行うことができます。
20歳前傷病の障害基礎年金の障害認定日とは
20歳前傷病の障害基礎年金の障害認定日は、
- 20歳の誕生日
- 請求する傷病の初診日から起算して1年6か月を経過した日
のいずれか遅い方となります。
20歳前傷病の障害基礎年金とは
先天性の病気などにより20歳前から障害があり、
初診日が、20歳前(年金制度に加入していない期間)にあり、かつ、
障害の状態が認定基準に該当する場合には、障害基礎年金を受けることができます。
等級は1級と2級があり、障害の程度によって決められます。
※初診日とは、出生直後に、あるいは乳幼児期の健康診断(6ヶ月〜3歳時健診)、または養護学校、更生相談所等の各種検査のいずれかにおいて、医師または歯科医師の診断により、20歳までに障害が確認されている場合や、療育手帳等が交付されている場合を含みます。
知的障害とてんかんの認定基準は、以下の通りです。
知的障害とてんかんが併存しているときは、諸症状を総合的に判断して認定されます。
知的障害の認定について
知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、
日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断されます。
日常生活能力等の判定当たっては、身体的機能および精神的機能を考慮の上、
社会的な適応性の程度によって判断されます。
知的障害の認定基準
- 1級…食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの
- 2級…食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの
てんかんの認定基準
【1級】
- 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上あり、かつ、常時の援助が必要なもの
【2級】
- 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくは、C又はDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの
【3級】
- 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくは、C又はDが月に1回未満あり、かつ、労働が著しい制限を受けるもの
(注)発作のタイプは以下の通りです。
- A:意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
- B:意識障害の有無を問わず、転倒する発作
- C:意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
- D:意識障害はないが、随意運動が失われる発作
確かに、遡及請求が認められた場合は、
障害基礎年金2級の5年分が支給されることになるため、
数百万円単位で支給されることにはなりますが、
20歳の時の診断書がなければ遡及請求はできませんし、
20歳の時の状態が2級に該当しない場合は、認定を得ることができません。
まずは20歳の時点のカルテの有無を確認しましょう。
遡及請求ができない場合でも、事後重症請求は可能であることが拝察されますので、
上記の認定基準を参考にしていただき、事後重症請求をご検討されてはいかがでしょうか。
事後重症請求とは
傷病により障害の状態にあるものが、障害認定日において
障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなかった場合でも、
その後、状態が悪化し、障害等級に該当する障害の状態となった場合、
65歳に達する日の前日までに裁定請求をすることができます。
なお、事後重症請求で障害基礎年金2級が認定された場合は、
今後の分の国民年金保険料について、法定免除を利用することができます。
法定免除とは
次に該当する「国民年金の第1号被保険者」は、届け出れば保険料が免除されます。
- 障害年金1級または2級を受けている
- 生活保護の生活扶助を受けている
- 国立及び国立以外のハンセン病療養所などで療養している
国民年金保険料が免除となっている期間については、
老齢基礎年金の額は、2分の1を納付したものとして計算されるため、
将来の老齢基礎年金受給額は満額ではなくなります。
そのため、法定免除が受けられる方の中には、任意で納付する方もおられますが、
納めることが難しい場合は、法定免除を利用することができます。
◎障害年金の申請について
ご自身で書類をしっかり準備したつもりが、症状に合った等級が認められないケースや、不支給となるケースが見受けられます。
このようなことを防ぐためには専門知識が必要となりますが、そうなると社労士に相談するか関連書籍を参照しなければなりません。
当サイトでは1分で障害年金をもらえるか、カンタン査定をいたします。
◎社労士への依頼も合わせてご検討ください
審査を受ける機会は審査請求、再審査請求を含めて3回あります。
しかし、1度目の請求で認められない場合、2度目以降で決定が覆るのは、たった14.7%となっています。より確実に認定を得るために社労士に申請を代行依頼する方法があります。
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障害年金は国の施しではありません。国民の権利です。
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お電話でも承ります
06-6429-6666
平日9:00~18:00
このQ&Aの回答者
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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