知的障害とてんかんの障害年金申請で、5年遡及と国民年金の返還があるのですか?

- 詳しいプロフィール
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
-
私の弟は今年で50歳になります。知的障害とてんかんがあります。
てんかんの治療は20歳頃まで続けていましたが、発作の頻度が減ってきたため、それ以降は受診はしていませんでした。
最近になって療育手帳のことを知り、近くの精神科に通うようになりました。
障害年金も申請しようと役所に行くと、うまくいけば5年遡及の判定が下りて、これまで納めた国民年金が返ってくるかも知れないと言われました。
これが本当であれば数百万単位でもらえることになると思うのですが、本当ですか?
まず、遡及請求について検討し、次に遡及請求ができない場合について検討しましょう。
遡及請求とは
障害認定日から長期間経過していたとしても、障害認定日時点の診断書を取得することができれば、障害認定日時点で審査を受けることができます。
遡及請求で障害年金を受給するために必要なこと
障害年金の審査を受けることが受ける時点は、以下2時点しかありません。
- 障害認定日
- 現在
遡及請求とは、上記障害認定日時点で審査を受けることを指します。
遡及請求を行い、さかのぼって受給をするためには以下のすべてを満たす必要があります。
- 初診日が特定できていること
- 障害認定日時点に受診があり、医療機関に当時のカルテが残っていること
- 当該カルテに障害年金用診断書を作成することができる情報が記載されていること
- 医師が診断書を作成してくださること
- 審査の結果、障害年金の等級に該当すること
審査の結果、障害認定日の時点で障害等級に該当すると判断された場合、障害認定日にさかのぼって受給権が得られ、障害認定日の翌月分から現在までの障害年金(最大5年分)をさかのぼって受給することができます。
遡及請求で認定を得ることは容易ではありませんが、認定を得ることができれば生活に大きな助けとなります。
上記遡及請求が可能であるかを検討しましょう。
知的障害の初診日と障害認定日について
知的障害は、先天性またはおおむね18歳までに知的機能の障害があらわれるので、実際に初めて受診した日がいつであるかに関わらず、生まれた日を初診日とされます。
そのため、20歳前傷病の障害基礎年金の請求となります。
20歳前傷病の障害基礎年金とは…
先天性の病気などにより初診日が20歳前(年金制度に加入していない期間)にあり、かつ、障害の状態が1級または2級に該当する場合には、障害基礎年金を受けることができます。
この20歳前傷病の障害基礎年金の障害認定日は以下のいずれか遅い方となります。
- 20歳の誕生日
- 請求する傷病の初診日から起算して1年6か月を経過した日
知的障害の場合、初診日は生まれた日となりますので、障害認定日は20歳の誕生日となります。
本事案の場合:遡及請求ができるか
知的障害については「最近になって療育手帳のことを知り、近くの精神科に通うようになりました」とのことです。
20歳の時点で知的障害について医療機関を受診していない場合は、知的障害について20歳時点で審査を受けることはできないでしょう。
「てんかんの治療は20歳頃まで続けていました」とのことですので、てんかんについても20歳前傷病の障害基礎年金の請求となるでしょう。
てんかんについて、障害認定日時点の診断書を取得し、その時点で障害の程度が2級に該当すると判断されれば、時効消滅していない直近5年分の年金が支給されることになります。
障害年金2級に該当したことにより法定免除を受けられるため納めていた国民年金も返還を受けることができます。
しかし、「今年で50歳」とのことですので、初診日を特定し、30年前の障害認定日時点の診断書を取得する必要があり、遡及請求のハードルは非常に高いでしょう。
以下ではどのような状態ならてんかんで障害年金を受給できるか、確認しましょう。
どのような状態ならてんかんで障害年金を受給できるか
障害年金では、ケガや病気の程度に応じて等級が設定されています。
▼障害基礎年金
1級と2級▼障害厚生年金
1級、2級、3級障害が重い順に、1級、2級、3級となります。

1級、2級、3級の状態は、以下の通りとなっています。
てんかんの認定基準
以下、てんかんの認定基準となっております。
障害が軽い順に、3級、2級、1級となります。
3級
以下の基準1または基準2のいずれかを満たすこと。
<基準1>
◎発作の重症度(程度)
・意識障害があり、状況にそぐわない行為を示す発作
または
・意識障害の有る無しに関わらず、転倒する発作
◎発作の頻度
・年2回未満
◎発作がないときの日常生活の状況
・労働が制限を受けるもの
<基準2>
◎発作の重症度(程度)
・意識を失い、行為が途絶えるが、倒れない発作
または
・意識障害は無いが、随意運動を損なう発作
◎発作の頻度
・月に1回未満
◎発作がないときの日常生活の状況
・労働が制限を受けるもの
2級
以下の基準1または基準2のいずれかを満たすこと。
<基準1>
◎発作の重症度(程度)
3級の基準1と同じ
◎発作の頻度
年2回以上
◎発作がないときの日常生活の状況
・日常生活が著しく制限を受けるもの
<基準2>
◎発作の重症度(程度)
3級の基準2と同じ
◎発作の頻度
・月に1回以上
◎発作がないときの日常生活の状況
・日常生活が著しく制限を受けるもの
1級
◎発作の重症度(程度)
2級、3級の基準1と同じ
◎発作の頻度
・2級の基準2と同じ
◎発作がないときの日常生活の状況
・常に介護を必要とする。
20歳前傷病の障害基礎年金の請求の場合、上記2級以上に該当すれば、認定を得ることができます。
では、遡及請求ができなかった場合についても検討しましょう。
遡及請求ができなかった、認定を得られなかった場合は、事後重症請求を行うことができます。
事後重症請求とは
傷病により障害の状態にあるものが、障害認定日において障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなかった場合でも、その後、状態が悪化し、障害等級に該当する障害の状態となった場合、65歳に達する日の前日までに裁定請求をすることができます。
これを事後重症請求といいます。
事後重症請求で障害年金の認定を得ることができた場合、請求日の属する月の翌月分から受給することができます。
現在は知的障害、てんかんと診断を受けているとのことですので、どのような状態なら知的障害とてんかんで障害基礎年金を受給できるか、確認しましょう。
どのような状態なら知的障害とてんかんで障害基礎年金を受給できるか
障害年金では、ケガや病気の程度に応じて等級が設定されています。
▼障害基礎年金
1級と2級障害が重い順に、1級、2級となります。

障害年金の等級 障害の状態 2級 日常生活に著しい制限があるもの 1級 他人の介助がなければほとんど自分の用事を済ませることができないもの 知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定されます。
つまり、知的障害とてんかんが併存している場合、障害年金の審査では、別々に等級を出して足し合わせる(併合認定)のではなく、すべてを一つの病状としてまとめて評価されます。
本事案の場合:事後重症請求について
てんかんについて、初診日を特定し、30年前の障害認定日時点の診断書を取得できない場合は、遡及請求は難しいでしょう。
役所で「うまくいけば5年遡及の判定が下りて、これまで納めた国民年金が返ってくるかも知れないと言われました」とのことですが、本事案の場合、非常にハードルが高いものとなっています。
事後重症請求での認定を得ることも視野に入れ、障害年金の請求を前向きにご検討されてはいかがでしょうか。
障害年金を受給するために
障害年金の審査は、「しんどい」、「お金に困っている」、「悲しい」等ではなく、あくまで認定基準に該当しているか否かを審査されます。
そのため、国民年金法・厚生年金法や認定基準等をご存じない方がひとりで対応するには限界があります。
ご自分の生活がかかった大切なことなので、専門家である社労士に知識・経験を求めるのが最善の選択です。
一人でわけも分からず不安いっぱいで戦うのではなく、あなたの代理人となって受給に向けて取り組んでくれる専門家である社労士を味方につけてください。
お気軽にお問合せください。
障害年金は国の施しではありません。国民の権利です。
煩雑な手続きを代行し、権利を行使するお手伝いをしっかりさせていただきます。
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このQ&Aの回答者
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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