65歳になれば老齢年金が満額になって障害年金よりも金額が多くなる?

- 詳しいプロフィール
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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私の弟は、あと半年で65歳です。中等度の知的障害と診断されています。
診断されたのは去年で、障害者手帳も最近取得しました。
それまでは親が障害を認めたくなかったのか、病院に行くことはありませんでした。
現在は施設で暮らしており、少額の老齢年金を受給していますが、まもなく満額になります。
年金事務所で障害年金のことを聞くと、
65歳になれば老齢年金が満額になって障害年金よりも金額が多くなるので、
このままの方がいいと言われました。
本当にそうなのでしょうか?
さかのぼれる分などを考えても、老齢年金のままの方がいいのでしょうか?
本回答は2018年4月現在のものです。
障害年金において、知的障害の場合、
初診日は出生日となるため、20歳前傷病の障害基礎年金の申請になります。
障害基礎年金の支給額は平成30年現在、以下の通りとなっています。
障害年金の支給額(平成30年)
- 障害基礎年金1級…年974,100円
- 障害基礎年金2級…年779,300円
※障害基礎年金の受給権者に加算対象となる子がいる場合、子の加算を受けることができます。
また、知的障害の場合の障害認定日は、20歳の誕生日です。
20歳の誕生日の前後3か月以内の診断書を取得することができれば、
さかのぼって請求することができますが、
診断書が取得できない場合は、さかのぼって請求することはできません。
弟さまの場合、これまで病院へは行っていなかったとのことですので、
20歳の誕生日の前後3か月以内の診断書の取得ができません。
そのため、遡った請求はできず、事後重症請求のみとなり、
受給権が得られた場合、支給額は上記の金額のみになります。
一方、老齢基礎年金の支給額は、満額で779,300円です。
厚生年金加入期間があれば、報酬比例部分が上乗せになりますので、
障害基礎年金2級の支給額より多くなります。
老齢厚生年金の支給額は、厚生年金の加入期間数や報酬額等によって異なりますので、
障害基礎年金1級の支給額と比較する場合は、年金事務所でご確認ください。
障害年金は非課税所得となりますが、老齢年金は課税対象となっています。
障害年金は原則として有期認定のため、1〜5年ごとに更新の手続きが必要ですが、
老齢年金にはそのような手続きはありません。
また障害年金の等級は、審査により認定されますので、
どの等級が認定されるかについては、審査結果を待たなければなりません。
知的障害の各等級に相当すると認められるものを一部例示すると、
以下の通りです。
知的障害の認定について
知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、
日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断されます。
日常生活能力等の判定当たっては、身体的機能および精神的機能を考慮の上、
社会的な適応性の程度によって判断されます。
知的障害の認定基準
- 1級…食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの
- 2級…食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの
公的年金では、原則としては、一人一年金ですので、
障害年金と老齢年金の両方の受給権が得られた場合は、
どちらか一方を選択することになりますが、
65歳以降は、以下の組み合わせの中から選択することとなります。
障害年金と老齢年金の両方の受給権を得られた場合の組み合わせ
障害年金と老齢年金の両方の受給権を得られた場合の受給可能な組み合わせは、
- 障害基礎年金+障害厚生年金
- 老齢基礎年金+老齢厚生年金
- 障害基礎年金+老齢厚生年金
の3通りとなり、上記の中から有利なものを選択することになります。
また、途中で選択替えをすることも可能です。
これらのことを踏まえ、障害年金の申請について検討されてはいかがでしょうか。
なお、障害年金の事後重症請求は、65歳に達する日の前日までにする必要があります。
あと半年で65歳になるとのことですので、早めに検討しましょう。
事後重症請求とは
傷病により障害の状態にあるものが、
障害認定日(原則として初診日から1年6月経過した日)において
障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなかった場合でも、
その後、状態が悪化し、障害等級に該当する障害の状態となった場合、
65歳に達する日の前日までに裁定請求をすることができます。
障害年金の申請について
障害の状態によって等級が決まりますが、
提出書類によって、2級相当の状態なのに3級となったり不支給となったり
というケースが数多くあります。
そのため関連書籍をご購入の上、申請されることをお勧めします。
審査のチャンスは審査請求、再審査請求を含めて3回ありますが、
1度目に不支給となると再審査請求で支給が決定するのは14.7%となっています。
慎重にご準備ください。
申請の流れはこちらにて解説していますので、ご参考にしてください。
社労士への依頼も合わせてご検討ください
よりスムーズに認定を得るために社労士に申請を代行依頼する方法があります。
疑問などがございましたら、下記お問い合わせフォームからお気軽にご質問ください。
お気軽にお問合せください。
障害年金は国の施しではありません。国民の権利です。
煩雑な手続きを代行し、権利を行使するお手伝いをしっかりさせていただきます。
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このQ&Aの回答者
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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