特発性心筋症でペースメーカーをしていませんが障害年金はもらえませんか。もらえる場合はいくらですか。

- 詳しいプロフィール
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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私は現在50歳です。工場で勤務しています。
2年前、動悸や息切れが出るようになったので病院を受診したところ、特発性拡張型心筋症と診断されました。
現在も投薬治療を受けていますが、動悸や息切れが常にあり、デスクワークの仕事に変えてもらっています。残業も免除してもらっているため、収入が減っています。
自宅ではぐったりすることもあり、家のことができず妻に負担をかけています。
障害厚生年金の受給ができればと考えたのですが、心臓の病気はペースメーカーやICDを入れていないともらえない、働いていてはもらえないと聞きました。
私はペースメーカーもICDも入れていません。
このような状況では障害厚生年金の受給は無理でしょうか。
また、もし受給できるとしたら、年金の額はどの程度でしょうか。
仕事をしている状態でも、障害年金が受給できる可能性はあります。
障害年金の受給者のうち、34.06%の方々が働きながら受給しています。
受給者数
働いていない
働いている
働いている人の割合
2,096,000人
1,346,000人
714,000人
34.06%
そして、循環器系の疾患に限定すると、約半数の方々が働きながら受給しています。
循環器系の疾患による
受給者数働いていない
働いている
不明
働いている人の割合
50,000人
23,000人
26,000人
1,000人
52%
このように、働いているからといって受給できないわけではないことがわかります。
心疾患の方で、ペースメーカーを装着していない場合でも、障害年金が受給できる可能性はあります。
ペースメーカーやICDを装着したものは原則として障害年金3級と認定されますが、装着していない場合でも、以下を満たしていれば受給できる可能性があります。
- 検査成績(X線や心電図等)が異常値を示している。
- 病状が労働に制限を受ける程度
★例えば…EF値が50%以下を示し、病状をあらわず臨床所見(動悸、呼吸困難、チアノーゼなど)が複数あり、かつ、以下のいずれかに該当するものは、3級と認定されます。
- 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの(例えば、軽い家事、事務など)
- 歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
障害厚生年金3級の受給額
障害厚生年金3級の「報酬比例の年金額」になるため、一律に決まっていませんが、最低保証額(令和5年4月時点)が次の通り設けられていますので、認定を得られた場合、最低でも以下の額を受給することができます。
67歳以下の方(昭和31年4月2日以後生まれ)
596,300円
68歳以上の方(昭和31年4月1日以前生まれ)
594,500円
年額で596,300円ですので、月額にすると49,691円になります。
決して十分な金額とは言えませんが、減ってしまった給与を補うことができるのではないでしょうか。
なお、報酬比例の年金額とは、年金の加入期間や過去の報酬等(給与等)に応じて決まります。
厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算されます。
特発性拡張型心筋症で製造業に勤めていて障害年金を受給できたMさんの事例
私が申請をお手伝いした、拡張型心筋症でペースメーカーもICDも装着せずに障害年金を受給できた事例を紹介いたします。
性別・年齢
男性、40代
症状
毎月1回投薬治療。動悸、呼吸困難、息切れ、胸痛の自覚症状あり。ペースメーカーは装着していない。
就労状況
一般企業に勤務し、製造業に従事。現在の会社では勤続15年。
結果
障害厚生年金3級
年金額:596,300円(最低保証額)
障害年金の認定基準
障害年金には1級から3級の等級があり、各等級の認定基準は以下の通りとされています。
1級
他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のもの
2級
必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のもの
3級
労働に著しい制限を受ける程度のもの
この基準を見ると、「働いていたら障害年金はもらえない」と思ってしまいそうです。
Mさんも一般企業に勤めているため「もらえないだろうな」と考えたそうです。
しかし、これは目安であり、「働いていたらもらえない」「働いていなければもらえる」という主旨ではありません。もちろん、「一般企業に勤めていたらもらえない」という主旨でもありません。
拡張型心筋症など心疾患の審査で考慮されること
- 臨床症状(呼吸困難、心悸亢進、尿量減少、夜間多尿、チアノーゼ、浮腫等)
- 検査成績(X線、心電図等)
- 日常生活能力や労働能力
- 治療および病状の経過
等により、総合的に判断されます。
Mさんの具体的な状況
Mさんの具体的状況は以下のとおりです。
- デスクワーク中心の業務に変えてもらう。
- 残業は免除。
- 体調不良の時は仕事を休ませてもらう。
- 家事は妻に頼り、休みの日はどこにも出かけず、横になることが多い。
「労働能力がある」とは、障がいのない人と同様の労働環境で、同様の仕事をしている、できている状態をいいます。
Mさんは、表面的には一般企業に勤務しているため、日常生活能力も労働能力もあるように見えますが、実際にはそうではないことがわかります。
この事実を正確かつ、審査機関が3級の認定のために考慮する事項を余すことなく盛り込んだ書類を作成することで3級をもらえる可能性があると判断しました。
結果、無事3級の支給が決定されました。
Mさんがもらえた障害年金の金額
Mの場合、請求した時期は40代でしたが、発症は若く、初診日が20代の頃でした。
障害認定日までの厚生年金加入期間は約13年でした。
その間の報酬月額は20万円~30万円の間で変動し、賞与も出ている時期があり、賞与額は40万円~60万円ほど支払われている時期もありましたが、加入期間がそれほど長くなかったため、年金額は最低保証額(年額596,300円)になりました。
あなたの症状は受給できる可能性は十分にあります
あなたの症状は、「動悸や息切れが常にある」「デスクワークの仕事に変えてもらっている」「残業は免除してもらっている」ということですので、障害年金をもらえる可能性は十分にあります。
もう少し詳しい状況をお聞かせいただければ、障害年金をもらえるかどうかチェックいたします。
申請に必要な書類準備の難しさ
障害年金の審査に、面接はありません。
すべて書類で審査されます。
そのため、書類だけで「就労にどのような制限を受けているのか」「働いているならどんな風に働いているのか」を審査機関に分かるように作成しなければなりません。
必要なのは、客観的事実を揃え、正確に事実をわかりやすくすることです。
特に、精神の病気の場合は、目に見える症状ではないので、主観的な内容を記載するのでは不十分です。
Mさんは、「私は一般企業に勤めているから障害年金をもらえないと思っていました。もらえてよかった!」と大変喜んでおられました。
障害年金は「施し」ではなく「権利」です
障害年金は、施しではありません。社会保険料を納めている人にとっての権利です。
本当はもらえる権利があるのに、書類が不十分だからといって不支給になるのは残念なことだと思っています。
私は、もらうべき人のために、的確にお客様の状況を把握し「審査機関に必要なことを伝える」ことを常に意識しています。
この権利をきっちり行使できるようお手伝いいたします。
面談では社会保険労務士の中井が直接対応致しますので1日2人までのご予約とさせていただいております。
遠方の方の場合、ZOOMやLINEのビデオ通話での対応となりますが、月に5人程度と限らせていただいております。
お住いの都道府県によっては都道府県担当の社会保険労務士を案内させていただくケースがあります。
まずは、お気軽にご相談ください。
お気軽にお問合せください。
障害年金は国の施しではありません。国民の権利です。
煩雑な手続きを代行し、権利を行使するお手伝いをしっかりさせていただきます。
どんなご相談でも承ります。お気軽にお問合せください。
お電話でも承ります
06-6429-6666
平日9:00~18:00
このQ&Aの回答者
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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