今度、解離性大動脈瘤で人工血管の手術を受けるのですが、いつ障害厚生年金の申請をすればよいですか。

- 詳しいプロフィール
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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私は40代男性です。
5年前から病院に通い、今度解離性大動脈瘤で人工血管の手術を受けます。
その後も腹部大動脈瘤もあるため、いずれ手術をする予定です。
主治医からはこの先仕事は難しいと言われており、退職を検討しています。
私の場合、20年ほど厚生年金に加入しているため障害厚生年金が申請できると思うのですが、どのタイミングで申請をしたらよいでしょうか。
ご質問内容からは詳細がわかりかねますが、例えば、高血圧症により状態が悪化している場合は、今からでも申請は可能でしょう。
また、弁疾患などを併発し、血液検査や心電図等の検査所見が悪化している場合も、今から申請をすることは可能でしょう。
これらの症状がなく、検査所見等も認定基準に該当しない場合は、人工血管の手術をされた後に申請をされるとよいでしょう。
高血圧症とは
高血圧症とは、おおむね降圧薬非服用下で最大血圧が140mmHg以上、最小血圧が90mmHg以上のもの
高血圧症による障害について
高血圧症による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、一般状態、血圧検査、血圧以外の心血管病の危険因子、脳、心臓および腎臓における高血圧性臓器障害ならびに心血管病の合併の有無及びその程度など、眼底所見、年齢、原因(本能性または二次性)、治療および症状の経過、具体的な日常生活状況を十分考慮し、総合的に認定されます。
高血圧症による認定基準は以下の通りです。
高血圧の認定基準
【1級】
- 悪性高血圧は1級と認定する。
悪性高血圧とは、次の条件を満たす場合をいう。
- 高い拡張期性高血圧(通常最小血圧が120mmHg以上)
- 眼底所見で、Keith-Wagener分類3群以上のもの
- 腎機能障害が急激に進行し、放置すれば腎不全にいたる。
- 全身症状の急激な悪化を示し、血圧、腎障害の増悪とともに、脳症状や心不全を多く伴う。
【2級】
- 1年内の一過性脳虚血発作、動脈硬化の所見の他に出血、白斑を伴う高血圧網膜症を有するもの
【3級】
- 頭痛、めまい、耳鳴り、手足のしびれ等の自覚症状があり、1年以上前に一過性脳虚血発作のあったもの、眼底に著明な動脈硬化の所見を認めるもの。
- 大動脈解離や大動脈瘤を合併した高血圧は3級と認定する。なお、症状、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。
弁疾患の認定基準
心疾患の検査での異常検査所見は以下の通りです。
区分
異常検査所見
A
安静時の心電図において、0.2mV以上のSTの低下もしくは 0.5mV以上の深い陰性T波(aVR誘導を除く。)の所見のあるもの
B
負荷心電図(6Mets 未満相当)等で明らかな心筋虚血所見があるもの
C
胸部X線上で心胸郭係数 60%以上又は明らかな肺静脈性うっ血所見や間質性肺水腫のあるもの
D
心エコー図で中等度以上の左室肥大と心拡大、弁膜症、収縮能の低下、拡張能の制限、先天性異常のあるもの
E
心電図で、重症な頻脈性又は徐脈性不整脈所見のあるもの
F
左室駆出率(EF)40%以下のもの
G
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が 200pg/ml 相当を超えるもの
H
重症冠動脈狭窄病変で左主幹部に 50%以上の狭窄、あるいは、3 本の主要冠動脈に 75%以上の狭窄を認めるもの
I
心電図で陳旧性心筋梗塞所見があり、かつ、今日まで狭心症状を有するもの
(注 1) 原則として、異常検査所見があるもの全てについて、それに該当する心電図等を提出(添付)させること。
(注 2) 「F」についての補足
心不全の原因には、収縮機能不全と拡張機能不全とがある。
近年、心不全症例の約 40%はEF値が保持されており、このような例での心不全は左室拡張不全機能障害によるものとされている。しかしながら、現時点において拡張機能不全を簡便に判断する検査法は確立されていない。左室拡張末期圧基準値(5−12mmHg)をかなり超える場合、パルスドプラ法による左室流入血流速度波形を用いる方法が一般的である。この血流速度波形は急速流入期血流速度波形(E波)と心房収縮期血流速度波形(A波)からなり、E/A比が 1.5 以上の場合は、重度の拡張機能障害といえる。
(注 3) 「G」についての補足
心不全の進行に伴い、神経体液性因子が血液中に増加することが確認され、心不全の程度を評価する上で有用であることが知られている。中でも、BNP値(心室で生合成され、心不全により分泌が亢進)は、心不全の重症度を評価する上でよく使用されるNYHA分類の重症度と良好な相関性を持つことが知られている。この値が常に 100 pg/ml 以上の場合は、NYHA心機能分類で?度以上と考えられ、200 pg/ml 以上では心不全状態が進行していると判断される。
(注 4) 「H」についての補足
すでに冠動脈血行再建が完了している場合を除く。
【1級】
以下2点を満たすもの
- 病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA心機能分類クラス4)を有する
- 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの
【2級】
以下3点を満たすもの
- 人工弁を装着術後、6か月以上経過している
- 病状をあらわす臨床所見が5つ以上
- 異常検査所見が1つ以上
- 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の 50%以上は起居しているもの、または、身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の 50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
以下3点を満たすもの
- 上記異常所見のA,B,C,D,E,Gのうち2つ以上の所見がある。
- 心不全の病状をあらわす臨床所見が5つ以上ある。
- 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の 50%以上は起居しているもの、または、身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の 50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
【3級】
以下1点を満たすもの
- 人工弁を装着したもの
以下3点を満たすもの
- 上記異常所見のA,B,C,D,E,Gのうち1つ以上の所見がある
- 心不全の病状をあらわす臨床所見が2つ以上ある。
- 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの、または、歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の 50%以上は起居しているもの
大動脈疾患の障害年金
次のいずれかを満たすものは、原則として3級と認定されます。
- 胸部大動脈解離(Stanford分類A型・B型)や胸部大動脈瘤により、人工血管を挿入し、かつ、歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの、または軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
- 胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤(胸腹部大動脈瘤も含む)に、難治性の高血圧を合併したもの
※大動脈疾患に関連した合併症(周辺臓器への圧迫症状など)の程度や手術の後遺症によっては、さらに上位等級に認定する。
※難治性高血圧とは、塩分制限などの生活習慣の修正を行った上で、適切な薬剤3薬以上の降圧薬を適切な要領で継続投与しても、なお、収縮期血圧が140mmHg以上又は拡張期血圧が90mmHg以上のもの。
上記の認定基準を参考にしていただき、申請するタイミングを検討されてはいかがでしょうか。
(本回答は2022年8月現在のものです。)
障害年金の申請について
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このQ&Aの回答者
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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