68歳の母。4年前に足を骨折して人工関節。障害年金を遡ってとか無理ですか?

- 詳しいプロフィール
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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現在母は68歳です。
4年前に右足を骨折して、大腿骨は金属製の人工関節が入っています。
障害者年金は65才以前に申請しなければならないみたいですが、
遡ってとか無理ですか? 申請は煩わしいのでしょうか?
本回答は2017年5月時点のものです。
障害年金は原則として65歳の誕生日の2日前までに申請しなければなりません。
65歳以降でも申請できる場合は以下に限られます。
65歳以降でも障害年金を申請できる場合
- 初診日が、65歳の2日前までにあり、障害認定日の障害状態が障害等級に該当している場合
- 前発傷病と後発傷病を併せて、65歳前にはじめて2級となった場合
- 初診日において国民年金の任意加入者であった場合
- 初診日において厚生年金加入中であった場合
お母さまの場合、64歳の時の骨折が、
現在の人工関節そう入と相当因果関係があるとされた場合、
骨折のために初めて病院で診察した日が初診日とされ、
障害認定日請求のみ可能となります。
現在は68歳ですので、事後重症請求はできません。
障害認定日請求とは
初診日から1年6ヶ月経過した日、又は、
それ以前に傷病が治癒した日である障害認定日時点での診断書を取得し、
その障害認定日から1年以内に請求することを障害認定日請求といいます。
事後重症請求とは
傷病により障害の状態にあるものが、
障害認定日(原則として初診日から1年6月経過した日)において
障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなかった場合でも、
その後、状態が悪化し、障害等級に該当する障害の状態となった場合、
65歳に達する日の前日までに裁定請求をすることができます。
これを事後重症請求といいます。
人工関節をそう入した場合の障害年金
人工関節をそう入したものは、原則として3級と認定されます。
初診日から1年6ヶ月経過する日までに人工関節をそう入されたのであれば、
その時から3級と認定され、遡って年金が支給されます。
もし人工関節をそう入されたのが1年6ヶ月以降であれば、
1年6ヶ月時点での下肢の障害の状態を審査されます。
なお、3級という等級は厚生年金にしかない等級です。
障害基礎年金と障害厚生年金の障害等級について
- 障害基礎年金…1級および2級
- 障害厚生年金…1級、2級、3級および障害手当金
障害厚生年金か障害基礎年金か
障害厚生年金を受給できるか、障害基礎年金の受給となるかは、
初診日に加入していた年金制度によって決まります。
- 初診日が厚生年金被保険者期間中にある場合は、障害厚生年金
- 初診日が国民年金被保険者期間中にある場合は、障害基礎年金
- 初診日が20歳前または60歳以上65歳未満(国内に住んでいる方のみ)の年金未加入期間にある場合は、障害基礎年金
申請をするにあたっては、まず人工関節そう入の原因となった初診日を特定しましょう。
初診日を特定することで、
請求する障害年金が基礎年金になるか厚生年金になるかが決まります。
厚生年金加入期間中であれば、3級相当でも受給することができます。
もし、初診日が国民年金加入期間中であれば障害基礎年金の申請となり、
人工関節そう入のみでは3級相当とされるため、
認定を得ることは難しいでしょう。
ただし、そう入置換してもなお、
下記「一下肢の用を全く廃したもの」程度以上に相当するときは、
さらに上位等級に認定される場合があります。
一下肢の機能障害の認定基準
- 2級…一下肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの
- 3級…一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの、例えば、起床から就寝まで固定装具を必要とする程度の動揺関節をいう
老齢年金は、一定の年齢がくれば裁定請求することで受給することができますが、
障害年金は、初診日の特定をし、診断書を取得し、裁定請求をします。
請求したら必ず受給できるというものではなく、審査され、
障害等級に該当すると判断された場合、受給することができます。
障害年金の審査期間について
障害年金の審査期間は、
- 障害基礎年金の場合、受付年月日から3か月以内
- 障害厚生年金の場合、受付年月日から3か月半以内
にお知らせするように努めるとされています。
しかし、上記期間は「お知らせするように努める」とされており、
案件によって長短があり、長い場合は6か月ほどかかることもあります。
上記のように、障害年金の申請については、
手間と時間がかかり、老齢年金と比較すると煩わしいと感じるかもしれません。
ご質問内容からは詳しい状況がわかりかねますが、
受給の可能性が考えられるのであれば、申請を検討されてはいかがでしょうか。
なお、すでに老齢年金を受給されている場合は、
障害年金と併せて受給することはできません。
その場合は、最も有利となる組み合わせを選択することになります。
障害年金と老齢年金の両方の受給権を得られた場合の組み合わせ
障害年金と老齢年金の両方の受給権を得られた場合の受給可能な組み合わせは、
- 障害基礎年金+障害厚生年金
- 老齢基礎年金+老齢厚生年金
- 障害基礎年金+老齢厚生年金
の3通りとなり、上記の中から有利なものを選択することになります。
また、途中で選択替えをすることも可能です。
障害年金の申請について
障害の状態によって等級が決まりますが、
提出書類によって、2級相当の状態なのに3級となったり不支給となったり
というケースが数多くあります。
そのため関連書籍をご購入の上、申請されることをお勧めします。
審査のチャンスは審査請求、再審査請求を含めて3回ありますが、
1度目に不支給となると再審査請求で支給が決定するのは14.7%となっています。
慎重にご準備ください。
申請の流れはこちらにて解説していますので、ご参考にしてください。
社労士への依頼も合わせてご検討ください
よりスムーズに認定を得るために社労士に申請を代行依頼する方法があります。
私は元厚生労働省の事務官ですので、
役所の論理・理屈を理解しており、これまで90%以上の確率で認定を得ています。
もし社労士への依頼を検討される場合は、こういった点も合わせてお考えください。
疑問などがございましたら、下記お問い合わせフォームからお気軽にご質問ください。
お気軽にお問合せください。
障害年金は国の施しではありません。国民の権利です。
煩雑な手続きを代行し、権利を行使するお手伝いをしっかりさせていただきます。
どんなご相談でも承ります。お気軽にお問合せください。
お電話でも承ります
06-6429-6666
平日9:00~18:00
このQ&Aの回答者
- 2004年:厚生労働省入省
- 2008年:社労士資格を取得
- 2012年:西宮市の社労士事務所に就職
- 2015年:独立し、中井事務所を設立
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