厚生年金の適用範囲の拡大と障害年金
阿部 久美のブログ

年金財政再計算を機に、年金制度改革論議が盛んですが、適用拡大、検討の軸に制度改正を行わず現状維持のままにすれば、現役世代の手取り収入と比べた年金額の割合を示す「所得代替率」は50.8%で下げ止まる。これに対して、厚生年金の適用範囲を(1)週20時間以上働き月収が8万8000円以上の人(125万人)(2)一部を除き週20時間以上働く人(325万人)(3)月収5万8000円以上の人(1050万人)−に広げたと想定すると、(1)51.4%、(2)51.9%、(3)55.7%へそれぞれ改善する、という試算が取りざたされています。
この所得代替率は、老齢年金の問題ですが、厚生年金の適用範囲を広げることによって障害年金を受取ることのできる人が増えることも大変重要なことです。
というのは障害年金は保険的な性格を色濃く持っており、初診日(請求しようとする障害につながった傷病で最初に医師の診療を受けた日)に国民年金に加入していたか厚生年金に加入していたかで請求できる年金が決まってしまいます。
そして国民年金の障害年金は1級と2級、厚生年金障害給付は1級と2級(認定基準は国民年金と同じ)に加えて独自の制度として3級並びに障害手当金という制度があります。初診時に厚生年金加入中であった人が1〜2級に認定されれば障害基礎年金と障害基礎年金が2階建てで支給されます。しかし2級以上に認定されるには、基本的に就労が困難であったり、日常生活に多くの制限があり一人での外出や生活が困難である等、かなり高いハードルがあります。
一方3級、障害手当金は2級に比べると軽度の障害であっても、労働に制限を加えているかその必要がある、ありていに言えば働く力が元気な時の半分程度に低下していれば受給の可能性があります。しかしこの請求は、上記の通りあくまで初診日において厚生年金に加入していることが条件です。
冒頭の改正試算)(3)月収5万8000円以上の人(1050万人)の人に厚生年金の適用範囲を広げたとすると、これらの方々に障害厚生年金の受給資格が発生することになります。(厚生年金加入中に初診のある場合)
どんな場合に請求できるのでしょうか?特徴的な障害をいくつか挙げておきます。
1、両眼の視力が0.6以下に減じたもの
2、一眼の視力が0.1以下に減じたもの
3、両眼の調節機能及び輻輳機能に著しい障害を残すもの
4、一耳の聴力が、耳殻に接しなれば大声による話を解することができない程度に減じたもの
5、そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの
6、脊柱の機能に障害を残すもの
7、一上肢のおや指のは用を廃したもの
8、精神または神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
9、常時の在宅酸素療法を施行中のもので、かつ、軽易な労働に常に支障のあるもの
10、心臓弁疾患で複数の人工弁置換術をうけているもの
11、ペースメーカー、ICDを装着したもの
12、一上下肢の三大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節を挿入置換したものや両上下肢の三大関節中1関節以上に1それぞれ人工骨頭又は人工関節を挿入置換したもの
13、人工肛門又は新膀胱を造設したもの又は尿路変更術を施したもの
もし今現在、月収6万円のパートで働いていて、左の股関節を人工関節に置換しても障害年金の対象とはなりません。将来、改正され厚生年金の適用を受けることになれば、厚生年金加入中に初診のある場合には3級の鵜飼厚生年金を受給できるようになるということです。
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