神経症や人格障害が障害年金では認定されないのは不当である。
阿部 久美のブログ

障害認定実務上、障害の認定対象傷病から原則として除外されている精神疾患がある。「神経症」と「人格障害」に分類される精神疾患である。一方、精神障害者保健福祉手帳の認定基準にはこれらを除外する取り扱いはない。
「障害認定基準」によると、人格障害は原則として認定の対象とならず、神経症についても、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として認定の対象とならないとされている。
ただし、神経症にあっては、精神病の病態(統合失調症・気分〔感情〕障害)を示している場合には、対象傷病である統合失調症及び気分〔感情〕障害に準じて取り扱うこととされている。(人格障害にはこの例外も認められていない)。
しかし、人格障害と神経症を認定の対象としないことについて、法令上の根拠は全く存在しない。
神経症が除外されている理由は、心因性であるため一定期間で治る可能性が高いことや精神病よりも障害の程度が軽微であることが挙げられている。しかしながら、神経症でも、重篤な病状で日常生活能力が著しく低下し、慢性症状を呈している例はごく普通に存在しており、法令上の根拠もなく認定基準という通知のみで除外していることは不合理であり差別である。
例えば神経症には、「恐怖症性不安障害」、「パニック障害」、「強迫性障害」、「重度ストレス反応」、「心的外傷後ストレス反応(PTSD)」、「適応障害」、「解離性障害」等あるが、それらに症状が重症化、慢性化して、社会生活を送ることが困難で収入を得ることができずに所得補償を必要としている方々が多数いらっしゃる。
障害認定基準における神経症の記載において、精神病の病態を示している場合について統合失調症及び気分〔感情〕障害に準じて取り扱うとされていることは、とりもなおさず神経症と精神病の境界が明確でなく線引きが容易に行いえないことを示している。
そもそも神経症が心因性、精神病は内因性という見方自体が国際的には克服されている。「神経症と同様に精神病という概念も明確さを欠くため、近年の国際分類や米国のDSM-3は精神病という言葉の使用に慎重な態度をとっている。」(縮刷版 精神医学事典457P)「DSM-3、DSM-4では心因性疾患を意味する神経症という用語の利用を廃し」している(現代臨床精神医学)とされている。
社会保険審査会裁決でも、神経症の強迫性障害と精神病のうつ病を引き合いに出して、うつ病治療薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬が強迫性障害にも有効であるという事実などを挙げ、強迫性障害はうつ病の類縁の可能性があると指摘し、神経症と精神病の境涯が明確でないことを認めているものがある。
社会保険審査会も多分に懐疑的で、上記のように認定対象と認められるとする裁決と神経症であることをもって対象外と一蹴される裁決などが混在している。
また、臨床面の調査からは、強迫性障害では67%、パニック障害では50〜65%、PTSDでは48%の割合でうつ病が併存していることや適応障害の場合には、診断後5年後には40%の人がうつ病等の診断名に変更されていること、不安症のうち74.9%に双極性障害が、56%にうつ病が、38.3%に統合失調症が並存していることが明らかになってきた。
神経症や人格障害で日常生活・社会生活に支障を生じ、苦しんでいる多くの方々の救済ができるよう、これらの傷病名の対象者が障害認定から除外されることがないように国が通り扱いを改めることを求めて、行政訴訟も含めて働きかけていくことが必要と考える。
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